阿部光利
- 地域全体で認知症の方を支える体制の整備について
- 在宅療養推進について
- 自転車行政について
1.自転車保険の加入促進について
2.自転車安全利用の促進について
◆阿部光利 委員 つなぐプロジェクト、阿部光利でございます。
さて、このたびの28年度予算案は、服部区長の就任後初めての当初予算であり、台東区政最大規模の予算となりました。今回の予算案については、総括も含め、質問の後につなぐプロジェクト、冨永幹事長より賛否を表明させていただきます。
これより私より、大きく分けて3点、総括質問をさせていただきます。
まず、1点目は、認知症患者を支える体制の整備についてお伺いいたします。
先月、徘回中の認知症高齢者が起こした電車事故に対して、国内で初となる判断基準が最高裁判所より下されました。これは認知症の人が第三者に損害を与えた場合に誰が最終責任を負うのかが問われた裁判でしたが、最高裁は認知症の人の監護者が認知症の人の監督責任を問わないケースもあると、賠償責任を限定的に解釈する考えを示しました。
今までの最高裁の判断基準は曖昧で、献身的に介護をすればするほど重い責任を負うことになりかねない。ともすると介護にかかわることを敬遠する人も出てくるんではないかと危惧されました。今回の最高裁の判決は、認知症高齢者が2025年には700万人を超えると予測されている中で、今後の日本社会のあり方を決めるものとして注目が集まっており、各方面に大きな波紋が広がりました。
大牟田市で認知症のサポート研究会を主催している大谷るみ子氏によると、在宅介護をしている家族の負担を踏まえた判断が示されたことは評価したい。ただし、私たち専門職はこの判断にほっとしているだけでなく、認知症の人と家族への支援が不十分で、国と医療・介護関係者らが推進する地域包括ケアの重要な課題であることを認識する必要があると、厳しいコメントを残しております。
厚生労働省も認知症対策の必要性を強調しており、昨年策定した国家戦略である新オレンジプランを着実に実行していく姿勢を示しております。報道によれば、同省幹部は介護家族に責任はないという判断は、一般市民の感覚に近いと感じた。だが、認知症の人が原因で損害が生じている以上、万事解決とはならない。こういう悲劇が起きないように認知症対策をしっかりと進めていくと語っております。
政府が策定した新オレンジプランは、住みなれた地域で暮らし続けられるように、認知症サポーターの養成数を17年度までに現在の713万人から800万人にふやす計画と、高齢者が行方不明になったときに地域の生活関連団体などが捜索に協力して、速やかに行方不明者を発見、保護する仕組みの徘回・見守りSOSネットワーク事業の推進などが上げられております。
在宅介護中心の社会の実現は国家的な課題で、今回示された基準によれば賠償責任を負わない家族の範囲は広がる可能性があり、さまざまな人が介護に参加し、負担を分け合う在宅介護の方向性にかなうものであると考えます。認知症の方やその家族が安心して暮らすために、新オレンジプランに沿って徘回に対応する見守りネットワークの構築や認知症の方への接し方を学んだ認知症サポーターよる体制整備が必要不可欠であると考えます。
昨年の11月に保健福祉委員会で山口県萩市に徘回・見守りSOSネットワークについて視察をしてまいりました。認知症の高齢者等が徘回し、行方不明となった際に警察や家族、関係機関だけでなく、萩市ではあらかじめSOSネットワーク協力店として市に登録をしてもらった一般の店舗や事業所、防災メール登録者に行方不明者の情報を提供することで、広範囲での捜索による早期発見と安全の確保を目指しておりました。これは新オレンジプランに沿うとともに、独自性もあり、大いに評価できるものでありました。
既に社会問題化している認知症高齢者の徘回問題ですが、認知症を発症しても住みなれた地域で安心して暮らし続けるためには、認知症の方を地域全体で支える体制の整備が必要であると考えます。そこで区長の所見をお伺いいたします。
○委員長 区長。
◎服部征夫 区長 阿部委員のご質問にお答えいたします。
認知症高齢者やそのご家族が住みなれた地域で安心して暮らしていくためには、地域全体で見守り支えていくことが大変重要だと考えております。認知症が疑われる高齢者に対しては、家族を含めた地域での気づきと適切な対応が必要なため、区では現在、認知症サポーター養成講座や声かけ訓練の実施により、正しい知識の普及啓発を進めています。また、見守りについての協定を現在29の機関と締結し、高齢者の異変に気づいた際の情報共有や連絡ができる体制を築いています。
さらに、かかりつけ医による定期受診や台東病院、永寿総合病院による診断・治療に加え、受診が困難な方を対象に認知症アウトリーチチームによる訪問を実施しています。加えて、介護サービスとして認知症デイホームや認知症グループホーム等を整備しています。今後は地域での見守り体制の強化と早期発見、早期対応が求められるため、より多くのサポーターを養成するとともに、見守りの協力機関もふやしてまいります。また、ご本人や家族を訪問し、集中的に支援に当たる認知症初期集中支援チームの整備を検討するなど、支援の充実に努めてまいります。
○委員長 阿部委員。
◆阿部光利 委員 区長、ありがとうございました。認知症初期集中支援チームの整備の検討をすると、また支援の充実に努めると今お話をいただきました。とても前向きなご答弁、まことにありがとうございました。
次に、最期まで住みなれた場所で暮らし続けるための在宅療養の推進についてお伺いをいたします。
私の幼少期には自宅で息を引き取る、そういう光景はもう当たり前のようにあった光景でありました。それがいつの間にか人生の最期は病院になってしまいました。
平成25年に区が実施した高齢者実態調査によれば、一般高齢者に対する調査で脳卒中の後遺症や末期がんなどで療養が必要になった場合、自宅で往診などの医療や介護サービスを受けながら生活する在宅療養を希望しますかとの問いに対して、34.8%の方が希望すると答えており、希望しないと答えた方15.1%を大きく上回っております。また、介護が必要になった場合、介護サービスや家族の介護を受けて自宅で暮らすことを48.5%の方が希望しております。
これらの結果を見ても、できる限り住みなれた地域で必要な医療・介護サービスを受けながら、安心して自分らしい生活を送り、住みなれた家で家族に囲まれて思い思いの療養生活を送るためのサービスが十分に受けられる環境づくりの整備の要望が高まっております。また、同報告書によれば、医師との連携について、課題・困難に感じることは何かという質問に対して、ケアマネジャーの52.8%が医師との連携がとりにくいと回答しているデータもあり、医療・介護の連携が十分とは言えない現実があるようです。患者のニーズに応じた病院・病床機関の役割分担や医療機関と介護の間の連携強化を通して、より効果的、効率的な医療・介護サービス提供体制の構築が必要であると考えます。
例えばですが、これまで元気に過ごしておられた方が突然脳卒中で倒れ、入院したとします。その方が治療が終わって退院して自宅で療養が必要となった場合、家族の介護の負担や容体が急変したときの対応など、本人や家族の不安は非常に大きいものであると考えます。その不安の解消の一端となるのが既に本区で実施しております台東病院内に設置した在宅療養支援窓口であります。その窓口では、患者やその家族だけでなく、ケアマネジャーや介護事業者などからさまざまな相談があり、在宅療養を進める上で重要な役割を担っております。
内閣府の平成27年度版高齢社会白書によれば、65歳以上の高齢者は2025年には3,657万人となるとの推計が出され、在宅で療養が必要になる方々はますますふえる傾向にあります。となると、地域包括ケアシステムの構築を着実に実現していく必要があり、2025年のイメージを見据えつつ、あるべき医療・介護の実現に向けた方策、例えば訪問診療や往診体制の充実、医療・介護関係者の情報交換の場の確保、医療と介護の連携マニュアルの整備などが必要であると考えます。
我が国は女性の平均寿命は86.83歳で世界第1位、男性は80.5歳で同3位となっています。そして世界でも類を見ない高水準の医療・介護制度を確立してまいりました。今後は最期まで住みなれた地域で自分らしく暮らしたいという方の要望に応えるための環境づくりの推進が必要であると考えます。そのためには医療と介護のサービスが切れ目なく提供される体制が必要であると考えますが、今後、区はどのように取り組んでいくのか、区長の所見をお伺いいたします。
○委員長 区長。
◎服部征夫 区長 ご質問にお答えいたします。
要介護状態になっても住みなれた地域で安心して暮らし続けるためには、医療と介護のサービスが切れ目なく提供できる体制が必要です。区では、関係者から成る協議会の設置や区民や関係機関からの相談に応える在宅療養支援窓口を設置するなど、体制づくりに取り組んでまいりました。現在、医療関係者と介護事業者との情報共有の仕組みづくりや多職種の連携に向けた取り組みを推進するため、研修の充実など協議会で鋭意検討を行っております。一方、区内の医療機関においても急変時の受け入れや訪問リハビリなど、在宅患者を支える体制整備に取り組んでいます。今後ともこれらの取り組みをさらに充実させ、区民の皆様が安心して療養生活を送ることのできる体制の構築に努めてまいります。
○委員長 阿部委員。
◆阿部光利 委員 ありがとうございました。
在宅療養は国の方針であります。今回の質問のベースには療養が必要になっても住みなれた地域で暮らしたい、その体制の整備についてお尋ねをしたわけでございますが、区長から現在やっている取り組みを充実させ、区民が安心して暮らせる、そういう体制を整えていくという力強いご答弁を頂戴いたしました。今後ともこの住みなれた地域での療養体制、よろしくお願い申し上げます。
それでは、最後に、自転車行政についてお伺いいたします。
本区では、来年度予算案に区民が自転車を安全に利用できる環境を整えるために、左衛門橋通り及び親疎通りにおいて自転車走行空間を整備していく経費を計上しております。自転車は子供からお年寄りまで誰もが気軽に乗ることのできる、便利で身近な乗り物です。しかし、手軽なだけに事故を起こしやすく、自転車事故は被害者と同時に加害者となる危険性もあるわけであります。
平成26年中に東京都内で発生した交通事故の件数及び負傷者は、前年対比で減少したものの、死亡者は増加しております。また、本区でも件数及び負傷者は減少していますが、死者は増加しております。また、交通事故件数における自転車が関与する事故の割合は4割を上回り、そのうち約6割を超える自転車に法令違反行為が見られると、「台東区の交通安全」の中で報告をしております。
警視庁と国土交通省は、自転車の事故を減少させ、自転車と歩行者双方との交通の安全を確保するために、さまざまな対策を講じており、自転車が加害者となる交通事故で人を死傷させた場合には、過失致死傷罪だけでなく、重過失致死傷罪を適用するなどの罰則の強化に努めております。自転車運転中に歩行者やほかの自転車運転者あるいはバイク、自転車の運転者に傷害を負わせたり、他人のものを壊したりした場合には刑事責任とは別に民事上の損害賠償責任が発生いたします。高額な賠償責任を負ってしまった場合、頼りになるのは各種の保険であります。また、自転車事故の被害者となった場合も、加害者側が補償ができない場合もあることから、被害者側の保険も重要となります。
この場合、加害者が使えるのは個人賠償責任保険です。これは自転車事故に限らず、個人が日常生活上、個人の生命や身体、財産に損害を与えた賠償責任を負った場合、加害者の負担をカバーするための保険であります。個人賠償責任保険は、自転車専用の保険が商品化されているほか、それ自体単独で商品化されてはおらず、自動車保険や火災保険、家財保険、傷害保険などの特約として附帯されている場合もあります。そのほか子供保険や学校で加入する団体保険にも賠償責任が自動的に附帯されている場合もあるようですが、保険は余り普及しておらず、一たび自転車事故が生じると賠償額が多額になる場合もある一方で、子供など責任能力のない者が加害者になることもあることから、被害者にとっても加害者にとっても大問題となる可能性があります。区民が自転車を安全に利用できる環境を整えるためには、自転車走行空間を整備していくだけでなく、自転車保険への加入促進をなお一層加速させていくことが重要であると考えます。本区では、東京都台東区自転車安全利用促進条例で区の責務として定めています。そこで自転車損害賠償保険などへの加入促進をどのように進めていくのか、区長の所見をお伺いいたします。
また、自転車行政では何よりも事故自体を減らすことが大切であります。2007年道路交通法改正により自転車の車道通行原則が徹底され、例外的に歩道通行できる場合が明確化されました。自転車事故の問題点として、自転車の通行スペースが十分に確保・整備されていないという道路環境の問題と、自転車の交通安全教育の不安と自転車の整備不良などが指摘されています。これらの問題にいち早く着目し、本区では保険と整備を二段構えでカバーするTSマーク取得助成を既に実施しています。愛知県安城市では上限が500円、武蔵野市や神奈川県大和市でも上限が1,000円のものを助成していますが、成果は余り上がっていないようであります。
そんな中、本区で助成している上限2,000円の助成は非常に充実した助成であると認識し、また成果も上がっていると聞いております。しかし、28年度の予算でも2,600件と非常に低い加入数を見込んでおります。区内19万人の半分が自転車保有者であると仮定いたしますと、推計で9万台が対象となるわけであります。民間の保険に掛けている区民を除いたとしても、ますますの充実が必要と考えます。そこで今後この事業を含め、自転車の安全利用の促進をどのように進めていくのか、お伺いをいたします。
○委員長 区長。
◎服部征夫 区長 ご質問にお答えいたします。
まず、保険の加入促進についてです。
近年、自転車利用者が交通事故の加害者となり、高額な損害賠償を請求されている事例が多く見られ、保険の重要性が高まっていることは私も認識をしております。そこで本区では、昨年から自転車賠償保険を付加したTSマーク取得費用助成事業、これを実施しております。実施に当たっては、広報たいとうや区公式ホームページに加え、自転車小売業者の協力を得て、広く区民の皆様に周知を図ってまいりました。その結果、事業開始以降5カ月で約1,000人の方がTSマークを取得しています。今後も民間の保険も含め、自転車講習会等の機会を捉えて情報提供を行い、より一層の加入促進に努めてまいります。
次に、自転車の安全利用の促進についてです。
自転車は便利な乗り物である反面、車両であることを認識してもらうため、区では小・中学校の安全教室や自転車安全講習会を実施し、ルールやマナーの普及啓発を行っております。また、TSマーク取得費用助成事業では点検整備をした車両を対象とし、安全な自転車の普及に努めております。今後もこれらを継続して行うとともに、警察や交通安全協会などと連携を深めながら、自転車の安全利用の促進に努めてまいります。
○委員長 阿部委員。
◆阿部光利 委員 区長、ありがとうございました。
3月に区内で幼い少年が自転車走行中に観光バスと激突、死亡いたしました。絶対に起きてはいけない事故であり、言葉にならないほど痛ましい事故であります。自転車専用道路が整備される一方で、今後も対人・対物にかかわらず、さまざまな事故が想定され、ますます大きな社会問題となっていくのではないかと思います。
本日は保険に特化して質問し、非常に前向きなご答弁を頂戴いたしました。本区においては、この自転車行政、先駆的に取り組んでいることは十分に承知しておりますが、どうぞこれに甘んずることなく、ますますの充実をお願い申し上げます。
これをもちまして私、阿部光利からの質問を終了とさせていただきます。ありがとうございました。
冨永龍司
- 産業振興における区内商工団体との連携について
- 小学校における確実な基礎基本の定着について
つなぐプロジェクト、冨永龍司委員。
それでは、質問をどうぞ。
◆冨永龍司 委員 つなぐプロジェクトの冨永龍司です。
早速ですが、大きく3点について質問させていただきます。
最初の質問は産業振興における区内商工団体との連携についてです。
平成21年度の本区の調査では、区内には製造、卸、小売、サービス業などの各種組合である商工団体が240団体とされております。こうした団体はそれぞれの目的を持ち、区内事業者の共同経済事業や福利の向上などに努めております。
現在、台東区においては各種団体にご協力いただき、さまざまな事業を展開しております。産業振興課では主に製造業系団体と行政計画である中小企業の人づくり支援事業や各種見本市、観光課でもみやげ品協会との各見本市やホテル旅館協会と昨年度はふるさと旅行券事業、交通対策課でも同協会とレンタサイクル事業を行っております。そして生活衛生課では生活衛生協同組合とさまざまな連携をいたしております。生活衛生協同組合とは、食品・美容・理容・旅館・公衆浴場・クリーニングなど、区民の生活衛生に特に関係の深い業種の事業者によって組織される組合で、適正な衛生管理や衛生施設の改善・向上を図るための指導的な事業を主体とし、本区の保健所事業にとって大切なパートナーであると委員会にて理事者からの答弁をいただきました。しかし、これら商工団体は大半で加入メリットが薄れ、脱会する事業者が後を絶たない上に、新規加入の会員が少ないので、今後の存続が危ぶまれております。
さきに述べたように、各団体は相互扶助の精神のもと、行政との窓口となり、区内中小企業発展のために力を尽くしてまいりましたし、これからもそうあるべきと思っております。私も経営者として調理学校への求人の際に、零細企業の弱点である社会保険の未整備により社員確保の厳しさに悩まされたこともありましたが、組合が立ち上げた保険組合により解消され、雇用につながることができました。そのほかにもいろいろなメリットがあるのですが、生かし切れないことにより今後の発展はおろか、存続も危ぶまれる団体もあります。各団体の自助の努力が大切なのは理解しておりますが、区の発展における大切なパートナーとして、行政のさらなるサポートが必要なのではないでしょうか。
服部区長は産業振興を第一に掲げ、来期より産業振興課を単独の部にする組織改正も行い、強化されることとなっておりますが、現在、産業振興課はさきに述べた製造業系団体との連携が主であります。しかし、そのほかの団体も本区の産業振興にとってとても大切な団体であり、パートナーだと思っておりますが、区内商工団体についてどのように認識をしているのか、区長のご所見を伺います。
また、各団体における問題点をしっかりと把握していただくためにも、前回の調査から5年以上が経過している実態調査を近々に行い、現状を把握すべきと考えますが、区長のご所見をお伺いします。
さらに、区内商工団体に対して自助の努力を即しながらも、行政と団体が一つとなり、知恵を出し合いながら、どのようなサポートができるのかを検討し、課題解決に向かって進んでいただきたいと思っておりますので、区内商工団体をどのようにサポートしていくのか、区長の所見をお伺いいたします。
○委員長 区長。
◎服部征夫 区長 冨永委員の質問にお答えいたします。
まず、区内商工団体は共同しての販路拡大やあるいは会員の福利厚生など、中小企業者の支援組織として大変重要な役割を担っており、本区の産業振興施策を進めていく上で大切なパートナーだと認識をしております。
次に、団体の現状については商工団体名簿を作成し、把握しているところですが、今後さらにアンケートやヒアリング調査を実施し、各団体が抱える課題等について状況の把握に努めてまいります。
次に、団体へのサポートについては、これまでも団体が実施する講習会やイベントに対して支援を行い、さまざまな相談に応じています。今後も産業振興施策の情報提供に努めるとともに、必要なサポートを行うなど、これは区だけではなく、やはり都や国と連携をして図っていくことだと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○委員長 冨永委員。
◆冨永龍司 委員 区長、ありがとうございます。区長も同じような気持ちでいていただけるということで、産業振興においてはなかなか特効薬はありません。ですが、現状やそれぞれに合った施策を続けることが大切だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
次に、小学校における確実な基礎・基本の定着について伺います。
今予算では、学習支援講座として中学生に外部講師を雇い、中学生の学力向上を図る施策が新たに盛り込まれました。私は、子供たちの明るい未来のためには学力向上は欠かせないものだと思っており、新たな第一歩を踏み出した今回の取り組みに向けた意欲には大いに期待するものであります。
そもそも学力向上とは何なのか。学力向上とは成績が上がればよいというわけではなく、自分でしっかりと考え、答えを導き出す、いわば考える力を高めていくことであり、結果として成績が上がっていくことにつながります。考える力は将来社会に出たときにおいても、与えられた仕事や課題にただ言われたことだけをするのではなく、自身で考え、よりよい方法を導き出すためのものであり、工夫することが大切なのです。その工夫が今の経済大国日本をつくってきたのではないかと思っております。
しかし、学歴至上主義が叫ばれる中、よりよい学校に進むために多くの子供たちは塾に通っております。これは私の私見ですが、塾は考える力を向上させる学習を教えるところではなく、受験に必要なテクニックを教えるところだと思っております。現状の受験の多くは、答えが合っているかが全てで、その答えを導き出すまでの過程は評価されません。そのため、塾では考える時間のロスを減らすためになるべく考えなくてよいテクニックを教えることになります。これが悪いとは言いませんが、その場しのぎのテクニックを磨くだけでは、さまざまな変化に対応する力が育ちません。だからこそ、考える力を学ばせるところが学校なのではないでしょうか。
2005年ごろから学力低下が取り沙汰されたことに伴い、2011年に、小学校では新たな学習指導要領が完全実施されました。数学、理科は授業時間も増加しましたが、学習内容も増加し、カリキュラムの前倒しも行われました結果、勉強についていけなくなる児童が増加してきております。その原因の一つとされているのが考える力の低下にあると言われております。それらの課題解決に向けても、小学校時において考える力を高めるためのカリキュラムをさらに充実していくべきです。
また、小学校での学習の中で、小4の壁というものがあると言われております。これはもともと精神的成長に伴う変化を指してきましたが、近年では学習での壁として問題視されております。小学校1、2年生では、国語、算数の2教科が主で、社会と理科は3年生から始まり4教科となり、国語も覚える漢字がふえ、それに伴い文章を書く機会もふえ、算数も計算が主な学習だったのが、中学で習う数学の基礎となることを習い始めます。小学校3年生の学習が身につかないと、小学校4年生で、より進むカリキュラムについていけなくなり、それがあらわれ、小4の壁となります。この時期までの基礎・基本をしっかりと身につけないと、その後の学習を理解するのが難しくなるのは当然であり、勉強についていけなくなる児童が増加することになります。
さらに、小学校高学年になると、考える力を養うカリキュラムが増加していきますが、そのもととなる知識である基礎・基本をしっかりと身につけなければ、考える力を高めることもできません。学習の基礎・基本を学ぶのが小学校時代であります。小学校のうちにしっかりと基礎・基本を身につけられるよう、さらなる対策が必要なのではないでしょうか。
学習についての考える力と基礎・基本の大切さを述べさせていただきました。そこで、改めて教育長に伺います。小学校では、小4の壁と言われる基礎・基本のつまずきが問題となっております。そして、児童が考える力を高めることのできる授業の展開も必要であると考えております。学校では、基礎・基本の学力の定着と考える力の育成に向けてどう対処していくのか、お伺いします。
○委員長 教育長。
◎和田人志 教育長 ご質問にお答えをさせていただきます。
小学校において、児童に基礎・基本の学力を身につけさせることは極めて重要なことでございます。小学生の時代につまずきが多く見られるのは、基礎・基本の学習から論理的な学習に移行する4年生の時期で、そのことがいわゆる小4の壁と言われております。この時期に指導の充実を図ることは特に重要だと認識いたしております。既に各学校では、学力調査の結果をもとに、全学年を通して学校独自の授業改善推進プランを作成し、児童の実態に応じて習熟度別指導を中心とした授業改善、朝学習など、補充学習の充実や家庭学習の習慣化など、さまざまな取り組みをいたしております。
教育委員会では、これまでも個に応じた指導の充実を図るための学力向上推進ティーチャーや理科支援員等を配置し、授業の充実を図ってまいりました。また、委員ご指摘の子供の考える力を高めるためには、教員一人一人の授業力を向上させることが必要と考え、校内研究を充実させるために指導、助言を行ってきております。
今後は、本区の全教員で構成する台東区の教育研究会とも協議をしながら、計画的な朝学習の実施や学び合いを取り入れた授業改善等を進めていき、子供たちの学力の確実な定着を図ってまいります。
○委員長 冨永委員。
◆冨永龍司 委員 教育長、ありがとうございました。私は、子供たちが学ぶ楽しさを知っていただきたいと願っておりますので、よろしくお願いいたします。
最後に、計画的なICT教育の推進について伺います。
本区においてのICT教育環境の整備は、電子黒板、実物投影機、教員用PC、タブレット、デジタル教科書等を段階的に整備してまいりました。そして、平成28年度予算にも、算数と数学のデジタル教科書の購入が盛り込まれました。ICTは学習にとって有益なツールの一つであり、私はたびたびICT整備の促進について質問させていただきました。
国が2020年までに1人に1台配布するとした方針を示しており、さらに、近隣区において全校配備やモデル校実施などが加速しておりますタブレット型PCについて伺います。
ICT教育先進国として注目されている国としてシンガポールがよく取り上げられております。経済協力開発機構が行っている世界65カ国の15歳の生徒、日本では高校1年生を対象にした読解力、数学知識、科学知識を調査する国際学習到達度調査というものがあります。この調査において、シンガポールが順位をどんどん上げ、2015年の結果において1位となりました。シンガポール教育省は、フューチャースクール@シンガポールと銘打った教育プログラムを組み、2008年に推進校を選出しました。その中でできたプログラムで、物理専門のAI、いわゆる人工知能を開発し、生徒それぞれの質問に答えるシステムをつくりました。このシステムのよさは、自分の興味や関心のある分野の学習を自分のペースで進めることができ、授業時間外にも継続した学習が可能となることです。
このようなシステムを本区にということではなく、シンガポールでは、しっかりとした目標を定めていることが評価されております。そのうちの一つは、既成のカリキュラムに沿った勉強の詰め込みだけではなく、常に自立した学習を志す精神を育てることにあるとしているところです。現在我が国においては、タブレットをどのように生かすのかは各自治体に任されている状態です。ですから、今後タブレット型PCを配備する際にどう生かして活用するか、しっかりとした目標を定めていかなくてはなりません。
さらに、この事業を進める上で、もう一つの課題は、整備するに当たり大きな費用がかかることです。荒川区では、中学校10校、小学校24校の計34校へ1万309台を整備し、タブレット費用、プログラム費用、環境整備費用などで約31億円がかかったとのことです。本区でも整備をするとしたら、小・中学校合わせて26校と、荒川区よりは多少少ないでしょうが、同程度の費用がかかると思われます。このように多額の費用がかかると思われますので、今までのICT整備のように、その都度対処していくのではなく、しっかりとした整備計画を立てる必要があるのではないでしょうか。
そして、さらに、荒川区ではタブレット事業を委託しているので、年間ランニングコストが約4億円強かかっているとのことです。この委託には、急な一斉配備により学校側の対応が整っていないために、各校にプログラムや修理のできる技術者を配備することになり、その人件費が含まれております。ですので、運用においてもしっかりとした準備が必要であります。
本区においては、スーパーティーチャー育成事業の中でICT教育の推進講座を設置、育成を行ってきましたので、そろそろ次の段階に進む、それは児童へのタブレット配布をし、検証するべきではないでしょうか。
そこで、まず、タブレットでの有用性の高いとされる特別支援学級への導入を検討するべきと考えます。それは、障害のある児童の学習において、効果的にICTを活用するための取り組みが、障害種を問わず、積極的に行われており、検証からの有用性として、視覚的、聴覚的にも多様な表現ができ、児童が関心を持ちやすく、主体的に学習するという授業改善の視点からも有益なツールとなり得るとされ、そのほかにも、自立を促進するためのコミュニケーションツールとしても利用性があるとされています。しかし、タブレットは全ての学習において有用ということではなく、和泉委員が指摘されたように、対比的な意味としてのアナログである今までの学習方法のほうが効果があることもありますので、早期に検証するべきではないでしょうか。
そこで、教育長にお伺いします。今後もICT教育を推進していくためには、整備計画を立てる必要があると考えますが、所見を伺います。
また、特別支援学級で新たにICT機器であるタブレット型OCを導入して、成果や課題を検証するとともに、効果的な活用方針を作成するべきではないかと考えますが、あわせて伺います。
○委員長 教育長。
◎和田人志 教育長 ご質問にお答えをさせていただきます。
初めに、ICT教育を推進していくための計画についてでございます。
国では、2020年までに全ての児童・生徒にタブレット端末を配備する目標設定をしております。本区におきましても、他自治体の成果や課題を検証するとともに、スーパーティーチャー育成講座の中でICT機器の活用に向けた研究も進めてまいりました。それらを踏まえ、具体的な時期や方法を検討してまいります。
また、障害のある児童・生徒一人一人の特性に応じた教育を展開するためには、ICT機器の活用が効果的とされております。特にタブレット型パソコンについては、児童・生徒が直観的に操作することができ、障害の種別や学習状況に応じた柔軟な活用が期待できます。このようなICT機器の活用、新たな導入については、学校の教職員も含めたプロジェクトチームを立ち上げ、推進に向けて努めてまいります。
さらに、特別支援教育におけるICT機器を効果的に活用した事例や手法につきましては、区内の教員及び保育士が研究成果の発表を行う教育実践フォーラム等で、学校園に対して広く周知し、共有化を図ってまいりたいと思います。
今後ともICT教育を推進し、質の高い教育環境の充実を目指してまいります。
○委員長 冨永委員。
◆冨永龍司 委員 教育長、ありがとうございました。
私は、先日、まだ進学先の決まっていない中学校の保護者からご相談を受けました。その子は、何かしらの理由で不登校になったそうで、成績がつけられず、進学が難しいとのことで、本人は進学に対して投げやりになっております。まだ進学の機会はあるのですが、中学校の段階で未来に対して一部を諦めてしまうのはとても悲しいことです。私は、学校内だけではなく、不登校で悩む子供たちにとってもタブレットを有用に使うことができるのではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
そして、今予算については、服部区長就任後、初の本格予算である28年度予算案では、産業振興施策の充実や子供の貧困対策拡充、特別養護老人ホームの新設助成や区有施設老朽化対策の計画的な実施、Wi-Fi環境の整備など、まさに必要な事業がしっかりと計上されており、省エネ施策推進については、物足りなさも感じるものの、本予算案については一定の評価をいたしております。
また、区政史上最大規模の968億円という予算になっておりますが、予算編成の考え方も示されたとおり、区の財政について予断を許さない状況という認識のもと、財政規律のもとに配慮した予算案だと思っておりますので、我が会派としては、28年度各会計予算案について、賛成することを表明し、質問を終わらせていただきます。
○委員長 冨永龍司委員の質問を終わります。